カテゴリー:ガラスの種類・特徴
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音は振動によって人間の耳に伝わります。そのため、どんなに壁を厚く作っても、ガラスが振動してしまえば音は部屋の内部にまで浸透してしまいます。外部の騒音が気になる場合、ガラスを防音加工にすることで大きな効果を得られることがあります。
しかし、防音ガラスを取り付けた場合、どのくらいの音までなら防ぐことができるのでしょうか。今回は、ガラスがもたらす防音の効果と、防音ガラスで防ぎきれる音のレベルについて解説します。
壁の厚さだけじゃない!ガラスから音が通ってしまう
一般に、外部からの騒音は住宅の壁を厚くすればするほど防ぎやすくなります。木造住宅に比べて、RC(鉄筋コンクリート)の方が高い防音効果を得られるのもそのためです。騒音の大きさを表す指標db(デシベル)を参考にすると、同じ80dbの騒音を外部から受けたとき、木造住宅だと45~40db程度まで音が軽減されませんが、RCなら35db程度に騒音レベルを緩和することができます。ちなみに、80dbはピアノの音くらい、40dbは図書館や静かな住宅くらいの騒音レベルです。
しかし、住宅の壁が厚かったとしても、ガラスに防音加工が施されていなければ、軽減できる騒音レベルはより小さなものになってしまいます。しかも、新築住宅での採用率が高いペアガラスには、防音効果はほとんどないといわれています。というのも、住宅の壁と同じように、ガラスの防音効果も厚みによって違いが出てくるからです。
ペアガラスというのは、複層構造をしているガラスのことです。しかし、ペアガラスはガラスが重なっているだけで、それ自体が厚みのある構造にはなっていません。しかも、等厚ガラスといって、重なったガラスの厚みが全て同じである場合が多いことも問題です。ガラスの厚みが同じだと、音の振動振幅も一緒になります。すると、全てのガラスが同じように共鳴してしまうので、音を防ぎきることができずに侵入を許してしまうのです。
ガラスだけでは防音できない?窓の構造がもたらす防音効果
もちろん、ペアガラスは1枚ガラスよりも厚みは増すため、1枚ガラスをペアガラスに交換すれば防音性能を高めることはできるでしょう。しかし、実はガラスだけを交換したのでは、防音効果を劇的に高めるのは難しいといわれています。というのも、ガラスの防音性能が高まっても、アルミサッシ(窓枠)から音が漏れてしまうからです。アルミサッシ単体の防音性能は低く、そこから音が侵入して騒音が防げないということがよくあります。そのため、より高い防音効果を目指すなら、ガラスだけでなく窓の構造も併せて考えた方が良いでしょう。
アルミサッシから漏れる音を防ぐためには、内窓を取り付けて二重サッシにするという方法が効果的です。内窓を取り付けると、外窓と内窓の間に空気層ができます。この空気層がクッションの効果をして、音が伝わるのを防いでくれるのです。また、内窓を新設すると、窓の気密性も向上します。気密性が高まれば、アルミサッシからの音漏れも防ぐことができるようになります。
外窓のガラスの厚みと、内窓の厚みとを工夫すれば、より高い遮音効果を得られることもあります。内窓を設置して二重サッシにすることによって、一重サッシの窓と比べて最大で45dbもの騒音をカットできるというデータもあります。もし、より高い防音効果を得たいのであれば、ガラスの種類だけでなく窓の構造にも気を配ってみてください。
ガラスの性能で騒音をカットする
もちろん、住宅の構造的に内窓を設置できないという人もいるでしょう。また、二重サッシにしても、ガラスそのものの品質が悪ければ、得られる防音効果も低くなってしまいます。1枚ガラスやペアガラスは、音域によって音を通しやすくしてしまうことがあります。 たとえば、交通騒音と子どもの叫び声は音域が大きく異なります。厚みのあるペアガラスでも、音域によっては騒音を防ぐことが難しいのです。そのため、ガラスの種類や性能を考える際は、遮音したい音域に合わせてガラスを選ぶ必要があります。
もし、今より騒音を和らげたいという程度なら、厚さ5mmのフロートガラスでも十分に騒音をカットすることができるでしょう。しかし、人の話し声が気になる場合や、遠くの交通騒音を遮断したいというなら、厚さ6.8mmの防音合わせガラスがおすすめです。近くの交通騒音や子どもの叫び声、ピアノの騒音を防ぐなら12.8mm以上の厚さを持った防音合わせガラスが必要になるでしょう。
このように、音の性質に合わせてガラスの種類を変えることで、より効率的に騒音をカットすることができます。また、ガラスだけでなく、アルミサッシの防音効果にも注目しておいてください。アルミサッシにも防音効果の高い気密サッシを用いれば、ガラスの防音効果と合わせて、より高い騒音カット効果を期待できるはずです。
まとめ
ガラスの遮音性能には、日本工業規格(JIS)が定めた指標があります。JISの遮音等級にはT-1からT-5まであります。数字が大きいほど遮音効果も高くなります。
たとえば、T-1しか遮音効果のなかったガラスをT-4にまで高めた場合、感覚的には騒音が半分近く軽減されたように感じるようです。
防音ガラスの種類や性能を考える際は、遮音等級も参考にしながら選んでみると良いでしょう。