カテゴリー:ガラスの種類・特徴
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窓ガラスやガラス家具を選ぶ際、ガラスの強度が気になりますよね。ガラスの強度は主に日本工業規格(JIS規格)に基づいて試験され、強度の基準はガラスの種類によっても大きく差があります。 また、何の製品に使用されるのかによっても基準は異なります。ここでは、「ガラスの強度を決める試験方法」や「強度が強いガラス・強度が弱いガラス」などについてまとめました。ガラス製品の強度について詳しく知りたい方は、必見です。
ガラスの強度を決める試験方法とは
品質を決めるための試験は日本工業規格に基づき、主に以下の7つの項目に沿って試験ガラスのされています。
(1)外観試験
外観試験は目視で行われる試験で、最小目盛り0.5mmの金属製直尺を用いて「欠けのサイズ」を測定します。
(2)厚さの測定
厚さの測定では辺縁から15mm以上離れた部分の厚さを測定します。試験では、最小目盛り0.01mmのマイクロメータや、それに匹敵する精度を持つ測定器が使用されます。
(3)辺の長さの測定
辺の長さの測定では最小目盛り1mmの鋼製巻尺を使って、辺縁から15mm以上離れた位置で辺に平行に測定されます。
(4)反りの測定
反りの測定では、直定規や伸ばした糸などを使って支持台で支えられたガラスの反りを測定します。また、全体的な反りや部分的な反りなどが厳密な規定のもと測定されます。
(5)落球試験
落球試験では製品と同じ厚さ・種類の材料板ガラス(610mm×610mm)を使って、落球による破壊の有無を試験します。落下させる球には鋼球が用いられ、ガラス板から100cm離れた高さから力を加えずに落下されます。 また、落球試験ではガラス板の中心点から25mm以内の範囲に鋼球が落球され、試験が行われる空間は常温とされています。
(6)破砕試験
破砕試験では製品から抜き取ったガラスを供試体として、ハンマやポンチで加撃したあとの破片の個数を測定します。 測定される破片は加撃点の位置から80mm以内の部分を除いて、破砕した破片の大きさが最も粗い部分の50mm×50mm枠内の破片数が数えられます。(そのほか、破片の数え方には厳密な規定があります)
(7)ショットバッグ試験
ショットバッグ試験とは溝形鋼を使った加撃試験で、加撃によって破壊された破片のうち最も大きなもの10個の質量を測定する試験です。加撃体はガラスに対して300mmの高さから振り子式に自由落下され、ガラスの中心点付近を一度のみ加撃します。一度の加撃でガラスが破壊されない場合は加撃体が落下する高さが750mm、1200mmと上げられます。
これらの試験で出た結果は日本工業規格が定める規定に沿ってI類、II類、III類などに分類されます。 JIS規格では強度が高いものほど類数が大きくなりますが、強化ガラスについては以下のような規定があります。
ショットバッグ衝撃特性
a)ガラスが破壊した場合,各供試体について最も大きい10個の破片の質量の合計が,供試体の65cmの面積に相当する質量を超えてはならない。
b)落下高さ120cmでガラスが破壊してはならない。
上記のJIS規格規定に基づく強化ガラスの種類は、以下の通りです。
強化ガラスのショットバッグ衝撃特性による種類及び記号
I類(記号:TI)・・・平面強化ガラスおよび曲面強化ガラスで上の規定に適合するもの III類(記号:TIII)・・・平面強化ガラスで上の規定に適合するもの
上記ではJIS規格における強化ガラスの規定や種類についてご紹介しましたが、JIS規格以外にもガラスの強度を定める規格には以下のようなものがあります。
- 一般社団法人 日本硝子製品工業界 規格
- 日本ガラスびん協会 規格
- 全国魔法瓶工業組合 規格
強度に強いガラス・強度に弱いガラスとは
ガラスにはさまざまな種類があり、一般家庭で見かけられるものには以下のようなものがあります。
- フロートガラス
- 強化ガラス
- 合わせガラス
- 網入りガラス
ガラスの強度は種類によってさまざまです。以下では、ガラスの種類ごとの強度や、使われている製品について見ていきましょう。
フロートガラス
フロートガラスとは、1枚の一般的なガラスをいいます。汎用的なガラスのため窓ガラスや額縁、キャビネットなどにも使用され、透明ガラスとも呼ばれています。
強度は他のガラスの中では弱く、厚さ5mmの場合、大人が手で叩いた程度の力でも破壊することが可能です。また、耐熱温度は110度で、急加熱や急冷却に耐性がありません。 フロートガラスを加工することで、強化ガラスや防音ガラスを製造することが可能です。
強化ガラス
フロートガラスに熱処理、冷却処理を加えたガラスをいいます。急激に冷却された強化ガラスはガラス表面の圧縮応力によってガラス内部に強力な引き合う力が発生しています。
これにより衝撃に対する強度が増幅され、フロートガラスの約3倍~4倍の強度があると言われています。また、フロートガラスは割れた際に大きな破片となるのが特徴ですが、強化ガラスにおいてはどの位置で割れたとしても一瞬で粉々に破壊されます。
粉砕した破片はフロートガラスの破片に比べて安全で、ケガのリスクが低いことから安全ガラスとも呼ばれています。ただし、ハンマーによる打撃のように一点に大きな衝撃が加わることで割れやすいのが強化ガラスの特徴です。
近年では窓ガラスやガラス家具など多くの場面で使用され、耐熱温度は200度、急激な冷却に対応できるのは170度までが限界と言われています。
合わせガラス
2枚のフロートガラスの間に特殊な樹脂膜を挟んで加熱・圧着処理が施されたガラスをいい、防犯ガラスとも呼ばれています。 合わせガラスはガラスが割れた際でも破片が飛散することなく高い耐貫通性を持つのが大きな特徴です。住宅への進入防止目的などで使用され、強化ガラスを使った合わせガラスも製造されています。
網入りガラス
網入り硝子とはガラス間に鉄線を入れて1枚のガラスに加工したものをいいます。鉄線が入ることによる強度の増加はなく、フロートガラスと比べても同等かそれ以下と言えるでしょう。
鉄線を入れる大きな目的としては、「火災対策」が上げられます。 火災などにより万が一ガラスが割れた際は鉄線により破片の飛散がおさえられ、火災時の二次被害を防ぐことができます。 住宅では火災がおきやすいキッチンの小窓や勝手口の窓などに使用される機会が多いでしょう。
上記のようなことから、各ガラスの強度を比較してみると、汎用性が高く最も強度があるガラスは「強化ガラス」と言えます。
また、泥棒の侵入防止など、特定の用途においては「合わせガラス」も強度が高いと言えるでしょう。反対に、強度が最も弱いガラスは「網入りガラス」です。 火災の危険がある場所を除いて、使用するのは控えておくのが安心です。
ガラステーブルはどれくらいの強度に耐えられる?
強度が強いことで知られる強化ガラスですが、強化ガラスを使った身近な家具にガラステーブルがあります。 ここでは、ガラステーブルが耐えられる強度について見ていきましょう。
一般的にガラステーブルが耐えられる荷重は、「耐荷重○○kg」のように製品ステッカーや取扱い説明書に記載されています。
強化ガラスは厚みが増すほど強度も強くなりますが、2mm~3mmの強化ガラスが使われている場合、強い強度を期待できないため注意してください。 強化ガラスが使われているガラス家具などを選ぶ際は、最低でも「5mm以上」の厚さを選ぶのが大切です。
また、5mm以上の強化ガラスが使われている場合でも、「1点に大きな衝撃」が加わることで強化ガラスは簡単に割れてしまいます。
フロートガラスのように大人が叩いただけではなかなか割れることはありませんが、「硬いもので叩く」「硬いものを落とす」などの衝撃には耐えることができないため、使用時は注意しましょう。
まとめ
最後に、ガラスの強度について大切なポイントを以下で確認しましょう。
- ガラスの強度はJIS規格が定める試験方法で決まっている
- ガラスは種類によって強度や特徴が異なる
- 強度が強いガラスは「強化ガラス」、強度が弱いガラスは「網入りガラス」
- ガラステーブルは「一点の大きな衝撃」には耐えられない
- 強化ガラスは5mm以上のものを選ぶのが大切